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相談室だより Vol.9「 この紋所が目にはいらぬか!……?…」

「カウンセラー(臨床心理士)松本よし子」

 看護師のA子さんにはどうしても苦手な先輩がいました。その先輩から注意されると頭が真っ白になり落ち着いて話し合うことができません。それどころか、今まで自分がやってきたこと全てが間違っていたように感じ、何をしたらいいのか考えられなくなってしまいます。凍りついたように動けなくなるA子さんに、また、先輩の叱責があびせられてしまいます。
 情けなくて自信のかけらももてないA子さんの落ち込みはつづくばかり…。そんなある日、A子さんは、いつも偉そうに自分を叱る先輩が同じようなミスをする場面に出くわします。「なんてこと!自分だってできないくせに!!!」 怒りはおさまらず、妙な高揚感で元気づくA子さんでした。そして、そんなことを繰り返しすっかり消耗してしまう毎日の中で、A子さんは、次第に、この`上がり下がり’の激しさに気づくようになりました。

 皆さんは、かつて高視聴率が続き国民的支持をうけた長寿番組『水戸黄門』をご存じでしょうか? 「この紋所(もんどころ)が目にはいらぬか!」と天下の副将軍水戸光圀公が印籠を掲げ、悪人が「ははぁ~」とひざまずく場面で一件落着、必ず悪人が罰せられます。
なぜ、この番組がこんなに好評だったのでしょう?
 それは、現実の生活では、理不尽な筋の通らぬことばかりに耐えている大人たちにとって、必ず善人は救われ悪人は滅ぼされるというこのドラマから、一時、うっぷんが晴れて「明日もまた頑張ろう」という元気をもらえていたからではないでしょうか?
 白・黒がはっきりしている状況で判断することはとても楽なことです。しかし、私たちが本当に悩み、またそれ故に、本当に人として実力をつけていくことができるのは、もっと複雑な要素のからんだ灰色の状況に対処していく経験を積み重ねていくことなのです。
 これは、とてもつらく難しいことです! 
 だから、せめて家に帰って休息の時間には、『水戸黄門』でも見て心を軽くすることが役立ったのでしょう。
 私たちは誰でも、複雑な問題に向き合わされると、白か黒か、0か100か、の単純思考に陥りがちです。「相手が白で自分が黒」になれば、それまで自分の中にあった善きものは消えてなくなり自己主張もできなくなります。そして「相手が黒で自分が白」になれば、自分は根拠なく肥大し、攻撃的な気持で我を忘れてしまうことにもなりかねません。
 誰もがこうなるのは避けられないことでしょう。大事なのは、このことに気づくこと。そして、どう自分を立て直すことができるか、なのだと思います。

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